大人気ジブリ映画『千と千尋の神隠し』。
公開からだいぶたった今でも愛され、人気の映画ですよね。
テレビでも度々放映されていますが、この映画にはたくさんの監督の若者へのメッセージが隠れています。
そして登場人物のキャラクターもそれぞれ濃く、謎が含まれています。
この記事では、登場人物を監督のメッセージから謎を読み解くとともに、何を伝えたかったのか考査してみたいと思います。
深く読み解くとまたこの映画の面白さが変わり、一段と楽しめると思いますよ。
『千と千尋の神隠し』のあらすじはこちらから
千と千尋の神隠し登場人物考査①:ハクの正体は?河の主

ハクは湯婆婆の弟子
ハクは『湯屋』で働く美少年。平安時代のような服装で、見た目は少年のような年齢的にも千尋の先輩ぐらいの出で立ち。
湯屋にやってきて、釜爺は反対したものの湯婆婆の弟子として魔法使いの見習いをしています。
見習いで魔法のような事ができるので、あらゆる場面で千尋を守ります。そして以前の世界へ戻れるよう、湯婆婆に詰め寄ります。
ハクの正体は河の主『ニギハヤミコハクヌシ』
千尋が以前住んでいた傍にあった川、『琥珀川』。
千尋が幼き頃に、川におぼれた時に助けたのがその河の主だったハクでした。
自分の名前は忘れてしまったハクですが、この事件があったから千尋のことは覚えていたと推測されます。
自分の名前を忘れ、湯婆婆の弟子となったハクですが、千尋との会話から自分の名前が『ニギハヤミコハクヌシ』だと思い出したのです。名前を思い出したことにより、自分も元の世界へ戻る決心をします。
湯婆婆の弟子を辞めて元の世界へ戻るよ、と千尋に約束していましたが、『八つ裂きにされても良いというのか』と湯婆婆に言われていたハク。
本当に元の世界へもどれるのでしょうか。
その答えとしては、名前を思い出したことによって魔女の契約は失効したと考えられます。
そのためハクは湯婆婆の呪縛から開放され、元の世界へ戻ることができたのではないでしょうか。
千尋との最後の会話からも辞められる自信を感じられました。
『私は湯婆婆と話をつけて弟子を辞める。平気さ、本当の名前を思い出したから。元の世界へ戻るよ』
と千尋に話しているハクの顔は凛々しく逞しく感じられますね。
千と千尋の神隠し登場人物考査②:母親が千尋に冷たい?

千尋の母親が冷たいという話が多く飛び交ってますよね。
表情が冷たい感じもありますが、なぜそう言われているのか主なところを書き出してみたいと思います。
①千尋は車で待ってなさいと置いていこうとする。
②怖がる千尋に「あまりくっつかないでよ、歩きにくいわ」と怪訝な態度
③川を渡る際、自分は父親に手助けを求め、千尋には「早くしなさい」と冷遇。しかも置いてさっさと進む。
結構冷たい感じですよね。
子供がたとえ反抗期だとしても、母親がここまで冷たい態度を取るのでしょうか。
ではそれはなぜなのか。
明確な答えは公式発表されていませんが、ファンの間では様々な憶測が飛び交っています。
①千尋が嫌い
→これはちょっと安直すぎると思うのですが…そう見えてもおかしくはありませんが。
②妊娠中である
→ホルモンバランスの影響でイライラしているとの推測。
③自立を求めている
→そうだとしてもやり方が??ですよね。
④旦那さんと恋人気分を味わいたい
→確かに旦那さんにもたれかかったり、千尋に対する言動のような冷たさは父親にはむけてませんね。
ですが子供そっちのけでそんなことあるのでしょうか…
宮崎監督談
宮崎監督は千尋と母親の関係について『子供との間に一線を引く現代の母親』と話していました。
監督から見ると、現代の母親はあんなふうに写ってるのか。
多種多様な時代だからこそ、母親像も様々。
千尋の仏頂面は自分を認められていないんじゃないかという不安からくる反抗的な態度だと思うのですが、そんな千尋を作り上げる上でも、母親像が一歩引いた冷たさを感じるものだったのかもしれませんね。
千と千尋の神隠し登場人物考査③:リンのモデルは白狐

湯屋ではカエルやナメクジが化けた姿で従業員として働いています。
ボイラー室で働く釜爺は蜘蛛ですよね。
では、千尋の世話をしてくれるリンは一体正体は何だったのでしょうか?
公式パンフレットではリンは人間とされています。
容姿は人間で間違いないのですが、人間らしからぬ発言や行動があるのです!
①千尋のことをとっさに『人間じゃん』という
湯屋で働く化け物たちは人間をにおいで判別します。
その証拠にハクは千尋に湯屋へ渡る橋では息をしてはいけないといいましたが、千尋は息をしてしまい人間がいるとバレてしまいました。
ではもしリンが人間だったとしたら、その能力はないはず。
でもボイラー室で釜爺に呼ばれ、千尋に初めてあった時、人間となぜわかったのでしょうか。
もしかしたら、リンも息を止めて橋を渡ってこの湯屋で働く人間かもしれませんね。
②イモリが好物
釜爺から千尋を湯婆婆のところへ連れて行ってほしいと言われ、最初は断ったリン。
ですが、釜爺からイモリの黒焼きをちらつかされ、渋々了承してました。
人間だったら、イモリの黒焼きで了承するでしょうか?
リンはそして14歳という設定。
14歳がイモリの黒焼きで了承するとは考えにくいでしょう。
③ラフ画に『白狐』とかかれている
上記にも記載したとおり、湯屋で働く従業員の正体はカエルやナメクジ。
その点からもリンが何かが化けたと考えても不自然ではありません。
『白狐』と言われる所以は、スタジオジブリが公開したラフ画のリンの頭上に『白狐』と記載があるからという筋が一番でしょう。
そしてリンの容姿も、肌は白く、ツリ目で狐のようですよね。
これは容姿だけを真似たのか、狐としたのかは不明です。
千と千尋の神隠し登場人物考査④:坊の存在が表すものは

湯婆婆の溺愛する息子、坊。
湯婆婆が母親で有ることは明確ですが、坊自身の年齢等は公開されていません。
一日中おもちゃやクッションだらけの部屋に引きこもり、外はばい菌だらけだと信じています。
千尋から言わせれば”こんなところにいるほうが病気になる”ような性格です。
食べたいものを食べ、肥満体質。
自分の思いが通らなければ、癇癪を起こし暴れだす。
癇癪を起こさせたくないために母親は甘やかし、なんでも言うことを聞く。
悪循環の末路です。
ですが、銭婆に魔法でねずみにさせられ、その部屋から外界へ脱出!
見るもの全てが新しく、新鮮で、目を丸くしている姿が印象的でした。
そして自分の足で歩けること、聞いていた銭婆は悪いやつではなく優しいおばあさん、自分の目で見たもの、肌で感じたもの全てが面白く楽しいものだと知ったのでしょう。
湯屋では『遊んでくれないと泣いちゃうぞ』と脅し自分の言うことを聞かせていた坊ですが、銭婆のところでは手伝いをし、感謝されることに喜びを感じていました。
宮崎監督はこの映画を、千尋の成長物語ではなく、”自分の中にあるものが状況に応じ発揮されたものだ”とおっしゃっていましたが、坊に関しても言えることでしょう。
坊も成長したというわけではなく、坊自身が持ち合わせていた能力を目覚めさせたと考査できます。
銭婆のところから帰ってきた坊は、1人で外を歩き湯婆婆に意見を述べるまでになっています。
坊が悪い方向では描かれていませんよね。
湯屋の環境が本来の力を発揮できなくなっているだけということです。
可愛い子には旅をさせよ、ということわざのようです。
千と千尋の神隠し登場人物考査⑤:カオナシの思い

不気味で始めてみた時はおばけなのか、人なのか、何ものなのかさっぱりわかりませんでしたよね。
話もできず、でもただただ寂しそうで、千尋に気づいてほしいような雰囲気。
この『カオナシ』が意味することは何なんでしょうか。
最大の特徴は言葉を持たないという点でしょう。
『あぁ』や『うぅ』といった言葉にならない喃語を発しますが、自分の思いが伝わらず、寂しそうにする顔はいろんなしがらみから自分の意見を述べられない、モジモジした子供のようにも見受けられますね。
宮崎監督談
宮崎監督はカオナシははじめそんな主要キャラクターに捉えてなかったといいいます。
カオナシは現代の若者をイメージしたと話しており、『ああいう誰かとくっつきたいけど自分がないっていう人、どこにでもいると思いますけどね』とコメントしてます。
ふわっと現れて、誰かに気がついてもらいたい、一緒にいてほしいと思う気持ちは誰しもが持ってるものかと思います。
カオナシは千尋に拠り所を見つけ、千尋がほしいと思うことを無闇矢鱈に実行しますが、千尋に拒否されます。そして自暴自棄になり、暴れまくり手の施しようがなくなりますが、銭婆のところへ行って頼りにされ、自分の身の置き場がわかったときの表情は穏やかで安心したような表情に変わります。
誰しも自分の存在意義を確かめたい、そんなメッセージなのかもしれませんね。
千と千尋の神隠し登場人物考査⑥:湯婆婆と銭婆が二人で一つな理由

銭婆のセリフに私達(湯婆婆と銭婆)は『二人で一つ』という言葉が出てきます。
二人で一つとは一体何を意味しているのでしょうか…
性格や仕草が相反する双子姉妹。
お互いの足りないものを補って生活してきたという意味で二人で一つ、という言葉なのかなと推測できますね。
ですが、銭婆の誕生秘話は意外と単純なことだったようです!
鈴木プロデューサーが対談の中でデザイナーのみなさんと銭婆について話しています。
銭婆誕生秘話
まずは宮崎監督がキャラクターを誕生させようともがいたが、中々良いアイディアがでず、双子にしよう!となったんだとか。
ビジュアルははじめ、湯婆婆よりも背が高く、銭婆はスレンダーなイメージで描かれていましたが、銭婆が物語の後半から出てくるということで、新キャラクターを説明する時間もないとなり、安藤さん(千と千尋の神隠しの映画監督)が『湯婆婆と同じで良いんじゃないですか?』と提案。
指輪の数で分類しようという話もあったが、ややこしくなるためまるっきり同じデザインとなりました。
そして湯婆婆と銭婆は二人で一人という考え方をすることによって、双子という設定が成り立ちました。
『THE ART OF Sprited Away』の中で語られています。
千と千尋の神隠し考査⑦:電車は死者をあの世に送る電車

銭婆のところへ向かうため、釜爺から電車の回数券をもらった千尋。
その際、釜爺から『昔は戻りの電車があったが、近頃は行きっぱなしだ』と言われ、『だから降りる駅を絶対間違えるな』と忠告されます。
千尋は、銭婆に魔法をかけられた、坊ネズミ、ハエトリ、そしてカオナシと一緒に電車に乗りました。
さてこの電車が意味するものは何でしょうか?
特徴としては、乗客が皆、透けているということでしょう。
カオナシと同じような人種ということなのでしょうか…?
宮崎監督談
『あの世界(電車の中)は我々が住む現代の世界と同じように、漠然とした世界なんです』とコメントしてます。
行きっぱなしの電車というのは、流れを意味し、周りに流され生きている現代の若者をイメージしているのでしょうか。
ですが、監督はこの風景についても『千尋にこの世界にもきれいなところもあると知ってもらいたかった』と話してます。
乗客がカオナシと同じような人種と考査すると、自分を表現できない誰かにくっついていたい者が、人や時間に流され生きていてネガティブな感情から自信を失うような厳しい現実でも、外に目を向けると綺麗なところもあるんだ、輝ける場所があるんだよという若者へのメッセージのように感じます。
千と千尋の神隠し考査⑧:ラストのトンネルを通る千尋の表情はなぜ怯えた表情なのか

ハクと別れ、トンネルをくぐると怯えたような、切なげな表情の千尋。
ハクや湯婆婆との世界では凛としたしっかりとした女の子の表情にかわりましたよね、最後の豚の中から両親を探すシーンの千尋は頼もしい顔つきでした。
それがなぜ、トンネルとくぐったら表情が変わったのか…
それはトンネルを通り抜けると、記憶がなくなっているからでしょう。
ハクとの世界の前の千尋に戻ったわけですから、臆病なちょっとむくれた千尋に戻ったからあの表情なんですね。
でも銭婆が編んでくれた髪ゴムは光ってる。。。
記憶は失ったけど、ハクとの世界はすべて現実にあったという証拠を示しているのでしょう。
まとめ
この記事では『千と千尋の神隠し』の登場人物の謎について考査をまとめて見ました。
謎といいますか、宮崎駿監督のメッセージが沢山隠れているこの作品。
10代の少女に送る映画と監督はおっしゃってましたが、10代の子どもたちはどこまで読み取れるのでしょうか。
大人でも考えれば考えるほど奥が深いこの映画。
だから何度でも楽しめるし、時代がたっても色褪せない映画となっているのでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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