2001年に公開され大ヒット映画となったジブリ作品、『千と千尋の神隠し』。
2003年にテレビ初放映された際の視聴率はその年の紅白歌合戦を上回る数字ととにかく国民に愛されている作品です。
制作のきっかけは宮崎駿監督が10歳の少女を喜ばせたい!という思いの作品だったそうです。
モデルもすごく身近で、監督のの友人、奥田誠治さんの娘さんである当時10歳の奥田千晶さん。
千尋のお父さんのモデルも奥田さんだということで、身近なモデルを起用する事によってリアリティが増し、見ている人にもすっと入ってくるキャラクターになっていますよね。
この大人気作品、『千と千尋の神隠し』のあらすじを簡潔にご紹介したいと思います。
結末までネタバレとなりますので、ご注意くださいね!
千と千尋の神隠し:内容~監督が伝えたかった思いとは?
宮崎駿監督が過去に述べた言葉をもとに、千と千尋の神隠しについての内容を見ていきたいと思います。
千と千尋の物語のテーマ:自信をもってほしい
宮崎監督はこの映画を自分の大事な10歳ぐらいの友人たちへ向けてつくった映画だと話しています。
それまでのジブリ作品は現代をこう思うとか、ややこしい作品が多かったが、この作品ではそういった部分はありません。
10歳の友人に『「あなた達のために作ったんだ」と言いたい。』と監督は話しています。
今の10代の少女たちが必要だと感じているものは何ですか?という質問に、
世界は奥深くバラエティに富んでいるんだってことを知ってもらいたい。
君たちが生きている世界には無数の可能性があって、その中にあなたはいる。
この世界は豊かなんだってことだけでいいんだと思います。
あなた自身もその世界を持っているって…
そして僕は彼女たちに「大丈夫、あなたはちゃんとやっていける」と本気で伝えたくて、この映画を作ったつもりです。
と答えています。
映画でも主人公・千尋に対し励ましや、千尋の勇気を称えるセリフが散りばめられていますよね。
主人公・千尋の成長が見られる?!
なんだか仏頂面で面白くないような様子の千尋から始まりますよね。
突然の引っ越しが決まって怒っているのか、反抗期なのか。。。
それについても宮崎監督が話しています。
容姿について
今日、曖昧となってしまった世の中というもの、曖昧なくせに侵食し、食い尽くそうとする世の中をファンタジーの形を借りてくっきりと描き出すことが、この映画の主要な課題である。
かこわれ、守られ、遠ざけられて、生きることがうすぼんやりにしか感じられない日常の中で、子どもたちはひ弱な自我を肥大化させるしかない。
千尋のヒョロヒョロとした手足や、簡単には面白ろがりませんよぉという、ぶちゃむくれの表情はその象徴なのだ。
千尋については、身近なごく普通なモデルがいるからこそ、現代の子供たちが思う葛藤や理不尽さが表情に出ていて想像の自分にとって素敵なモデルではないのでしょう。
余談ですが、逆にそのお相手ハクがなぜ美少年なのかという質問には、相手(千尋)がブスだからと答えいます。
千尋のうちに秘めている性格
現実がくっきりし、抜き差しならない関係の中で危機に直面した時、本人も気づかなかった適応力や忍耐力が湧き出し、果断な判断力や行動力を発揮する生命を、自分が抱えていることに気づくはずだ。
すなわち、これは成長物語ではなく、本来持ち合わせている自分の中の潜在能力を危機的状況化で発揮したということでしょう。
作品のメッセージ
そして千尋を通して10代の女の子たちへのメッセージが込められています。
パニックで「ウソーッ」ってしゃがみ込む人間が殆どかもしれないが、そういう人々は千尋のであった状況下ではすぐに消されるか食べられてしまうだろう。
千尋が主人公である資格は、実は食い尽くされない力にあるといえるだろう。
消して美少女だから、類まれな心の持ち主だから主人公になれるわけではない。
その点が作品の特徴であり、だからまた、10代の女の子のための映画でもあり得るのである。
ハクが千尋に教えてくれた「ここで仕事を持たない人間は湯婆婆に動物にされてしまう」
すごいワードですよね。
千尋はハクに言われた通り、湯婆婆に何度も「ここではたらかせてください」と強く言い放ちます。
怖かっただろうに、何度も何度も。
そして両親が豚にされてしまったという現実を1人受け入れなければなりません。
ハクからおにぎりをもらって涙しながら食べているシーンは、千尋が自分で奮起しようと頑張ったが、強い気持ちが切れた瞬間の涙で見ているこちらも泣けてきましたよね。頑張れってこのか細い女の子を応援したくなりました。

言葉の力
そしてこの千尋の言葉の力についても宮崎監督は話してくれています。
言葉は力である。
千尋の迷い込んだ世界では、言葉を発することは取り返しのつかない重さを持っている。
湯婆婆が支配する湯屋では「嫌だ」「帰りたくない」と一言でも口にしたら、魔女はたちまち千尋を放り出し、彼女はどこへも行く宛のないままさまよい消滅するか、ニワトリにされ食われるまで卵を生み続けるのかの道しかなくなる。
逆に「ここで働く」とちひろが発すれば、魔女といえども無視することができない。
今日、言葉は限りなく軽く、どうとでも言えるアブクのようなものと受け取られているが、それは現実がうつろになっている反映に過ぎない。
言葉は力であることは、今も真実である
力のない空虚な言葉が、無意味に溢れているだけなのだ。
現代の言葉の軽さを警告しているかのような作品です。
だけど、監督はそれは自分自身の問題ではなく、世の中の空虚がそうさせていると語っています。
すなわち、世の中が変化すれば、言葉の力はどうとでも変化するということですよね。
言葉は言霊、ということでしょう。
千と千尋の神隠し:あらすじを短く簡潔に
ここからはあらすじを最後の結末まで簡潔に書いていきます。
荻野千尋(おぎのちひろ)/千(せん)…主人公。湯婆婆の元で働くこととなる
ハク/ニギハヤミコハクヌシ…湯婆婆の弟子で魔法使いの見習い。千尋のことを助けてくれた
湯婆婆(ゆばあば)…湯屋『油屋』の経営者であり魔女。
銭婆(ぜにいば)…湯婆婆の双子の姉。容姿は湯婆婆と瓜二つ。同じく強力な魔力を持つ魔女。
坊/坊ネズミ…湯婆婆の息子。肥満体型。甘やかされて育ってるためワガママ。癇癪を起こすと暴れ泣きわめき、部屋を破壊する。
釜爺(かまじい)…湯屋のボイラー室にいる蜘蛛のような体型の老人。困ったときには千尋やハクを助けてくれる。
リン…湯屋で千尋をサポートしてくれる女性。
カオナシ…黒い影のような、そしてお面をつけている。ことばは『ア』か『エ』。千尋についてくる
未知なる世界へと迷い込んだ千尋

親の都合で引っ越しとなった10歳の少女、千尋。
引っ越しの途中、道に迷い込んだ先で不思議なトンネルを見つける。
その先には異国情緒が広がっており、千尋は嫌がったが、両親は強引に進み、誰もいない店で勝手に食事を始めた。
千尋は街を歩いているとハクから『ここにいてはいけない』と助言され、急いで両親の元へ戻ったが、豚になってしまっていた!

そこへまたハクが現れ、千尋に生き残るすべを教えてくれる。
ここで働かないものは動物にされてしまう。
湯屋行って『働かせてください』と言うんだ、というハクの助言通り、湯屋の経営者であり魔女の湯婆婆のところへ行き、しつこく頼み込んだのだった。
その結果働かせてもらうこととなり、名前を『千』にされてしまった。
湯屋で仕事をすることになった千尋

着替えや布団をリンから借りて一息つく千尋。不安いっぱいで過ごす夜だったが、ハクからのメッセージを受け取る。
翌日ハクが両親の元へ連れてってくれた。
豚にされ養豚場へ入れられてしまった両親の姿にショックを受け、思わず涙する。
ハクに元々着ていた洋服を返され、ポケットのカードを見つける。
自分の名前が『千尋』だったことに気づく、と同時に忘れかけていたことにも気づく。
湯婆婆は名前を奪い、操り支配していたのだ。
ハクは本当の名前を奪われたせいで湯婆婆の手下となり、この世界に留まっているというのだった。

仕事中、水を捨てに来た千尋は『かおなし』を見つける。
てっきりお客さんだと思い、湯屋へ招き入れる。
それ以来かおなしは事あるごとに千尋を助けてくれるのである。
ある日、ものすごい匂いを放つ『クサレ神』が湯屋へやってきてしまう。
新人の千尋は湯婆婆に無理やり担当させられ、1人接客することに。
千尋は苦戦しながらも、クサレ神をもてなしながら、何か身体に刺さっていることに気づく。
それを必死に抜き取った瞬間、クサレ神だと思っていたお客様は『河の神』だとわかった。
河の神は千尋に苦い泥団子と湯屋に大量の砂金を残してさっそうと帰っていったのだった。
ハクを救いたい!

千尋は白龍が何かに追われ、弱って飛んでいることに気づく。
白龍ことハクが追われていたのは湯婆婆の双子の姉、銭婆の魔法がかかった紙人形だった。
千尋はなんとかハクを自分の部屋に入れ込み、窓を締め追われていた紙人形からハクを守る。
ハクは血だらけで、尚且血を吐きながら湯婆婆の部屋へと行く。
千尋は外階段からハクを追いかけるが、千尋の背中には紙人形の残りが張り付いていた。
千尋が湯婆婆の部屋にたどり着くと、その紙人形は銭婆に変身し、坊や周りにいる騒がしい者たちを可愛い動物へ変身させてしまうのだが、ハクに気づかれ、紙人形を破ると銭婆は姿を消した。
最後の力を振り絞り、ハクは千尋共々釜爺のところへたどり着く。

そこでかわのかからもらった泥団子を半分食べさせると、ハクは銭婆のところから盗んだ印鑑と黒い化身を吐き出した。
千尋は釜爺にこの印鑑を銭婆に返し、謝りに行きたいと言う。
釜爺から40年前の電車の回数券を受け取り、リンに駅まで先導してもらった。
銭婆の家
電車に乗り、銭婆の家がある『沼の底駅』に到着すると、ランプが千尋たちを銭婆の家へと案内してくれる。
千尋は緊張の面持ちだが、湯婆婆とは反対な優しい雰囲気の銭婆が千尋たちを迎い入れてくれた。

優しい声でおもてなしをしてくれる銭婆。
ハクが盗んだ
印鑑を差し出し、謝る千尋。
印鑑に付いてた虫はどうしたんだい?という問いにも、踏んでしまったと素直に伝えると銭婆は大笑い。
千尋はホッとした様子である。
ゆっくりしておゆきと声をかけてくれるが、千尋はハクが心配だと伝える。
もうすぐ迎えが来ると伝え、髪ゴムを編んでくれた。
そこへ白龍の姿となって現れたハク。

銭婆はハクを許してくれたのだった。
ハクの本当の名前:ニギハヤミコハクヌシ
銭婆に別れを告げ、白龍の背中に乗って帰る千尋。
千尋はハクに自分の小さな頃の昔話をする。
幼い頃、川に溺れたことがあるとお母さんに教えてもらったの、その川の名は『コハク川』。
その瞬間ハクは自分の名前を思い出す。
私の名前は『ニギハヤミコハクヌシ』。
そうハクは川の神だったのだ。
名前を思い出したハクは鱗が剥がれ落ち、ハクの姿にかわり、千尋と手を取り喜ぶのであった。

大当たり~
湯屋に帰ると湯婆婆が待っていた。
湯婆婆は豚の中から自分の両親を見つけな、チャンスは1回だと千尋に言う。
この中から両親を見つけ出せれば、元の世界に戻れるのだ。この約束はハクが湯婆婆に取り付けたものだった。
千尋は吟味した結果、この中には両親はいないと自信に満ち、強く断言する。
その瞬間、『大当たり~』と湯屋で働くみんなが大喜び!
湯屋で働く契約書も破棄されます。
千尋は見事、湯婆婆の試練を耐え抜き、ハクと手をつないで湯屋をさりました。

ハクとの別れ
ハクは千尋を元の世界へ戻るため、道案内します。
ですが途中で『ここから先へは一緒には行けない』と立ち止まります。

消して振り向いちゃいけないよ、と千尋に告げますが、千尋は不安げ。
そしてハクのことを気にかけます。
本当の名前を取り戻したハクは、湯婆婆の弟子は辞めると言い、いつかまた必ず会おうと約束します。
千尋はハクに言われたとおり、振り返らずにトンネルまで行くと、人間の姿に戻った両親が待っていました。
両親と共にトンネルを抜け、車で新居へ向かうのでした。
まとめ
この記事では千と千尋の神隠しについて、監督の言葉をもとに内容を考査してみました。
千尋の成長物語と捉えている方も多い中、宮崎監督は成長物語ではなく、千尋本来が持ち合わせている能力が引きでただけだと語っています。
このメッセージはかなり響きました。
若い子達は誰もが成長すると思っている大人は多いと思うのです。
その期待をプレッシャーと思い、自分を見失ってしまったり、不安葛藤を抱いてしまったり。
それが悪いというわけではありませんが、
”自分が持っている魅力に気づいて自信を持ってほしい、誰しもが主人公だ”
という宮崎監督からのメッセージは感慨深く、多くの人にこのメッセージが伝わってほしいなと思いました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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